母乳育児・卒乳
出産前に考えていただきたいこと
出産するまでは皆さん「お産」のことばかり気になって「母乳」のことは深く考えない事が多いようです。
赤ちゃんは「ほっておいても自然に母乳を吸ってくれる」と思っている方がほとんどです。
ところがどっこい!
「お産」も大変だったけど「母乳育児」はもっと大変!と産後に気が付かれるのです。
「こんなはずではなかったのに!」と漠然と確信の無い自信を持っていたママ達は焦ります。
周囲の声に負けてあれだけ自信を持っていた母乳育児を早々にあきらめてしまいます。
そこで「ちょっと待った!!」と言いたいのは助産師です。
そうです!正しい知識とほんのちょっぴりの忍耐があれば母乳育児はそれほど難しいものではありません。
人間として生を受けて命を育む母乳は身体と知恵と心を育てる大切な大切な「泉」なのです。
人は人の母乳で育つように仕組まれているのです。
その身体のしくみたるやそれはそれはみごとな設計がなされていて人間の知恵ではとうてい計り知ることができません。
さまざまな事情があってどうしても母乳を飲ませられない方もいらっしゃいますが、そのような方は必要以上にご自分を責めたり罪悪感を持つ必要はありません。
思いを作り直して前向きに考えていただきたいと思います。
母乳が出るしくみ
母乳は出産後すぐに分泌するものではありません!
例外的な方もいますがほとんどの場合胎盤が娩出されて胎盤ホルモンの影響を受けなくなって2~3日後に乳汁分泌が始まり乳房の張りが出てきます。
産後すぐに母乳を吸わせるのはお母さんの脳に刺激を与え、乳汁の分泌を促進するための行為です。
赤ちゃんは誰に教わるでもなく誕生後すぐから母乳をくわえ上手に吸啜します。
(お腹の中にいるころから指しゃぶりをしている胎児の映像が紹介されていたりします。)
乳首が短かったり、赤ちゃんが飲み下手だったりする場合は、新生児期においてはたて抱きのほうが効率的だったりします。
初乳のこと
初乳は蜂蜜のように透明で粘りがあったり、バターを溶かしたような濃い黄色の粘着の強い液体だったりします。
この初乳をしっかり飲ませることが大切なのです。新生児の未熟な消化組織を守り、胎便と言って岩のりの佃煮のようなネバーっとした便の排泄を促進する作用があり、それにより新生児黄疸を軽くする作用もあると言われています。
産後1~2日は母乳がたくさん出ませんが赤ちゃん達はそのような状況に耐えられるようにつくられているらしく、故山内逸郎先生のお話ですと「赤ちゃん達は弁当と水筒を持って生まれてくる」んだそうです。
しかし、あまりにもオッパイが飲めなかったりすると、渇熱と言って水分が不足するだけで熱を出すことがあります。
そのような場合、あわてなくてもいいのでせっせと母乳を吸わせ、場合によっては湯冷ましをスプーンで飲ませます。
産後二日ぐらいは、乳房の張りもなく母乳も出ていないようだからといって母乳を吸わせないと、上記のようなことが起こりかねません。
でも、赤ちゃん達にとっては一滴、二滴の母乳が大切なのです。
出ないから吸わせない、張らないから吸わせないは間違いです。
出ないと思っても、張らないと思っても吸わせることが大原則です。
出産直後の赤ちゃん達はむくんでいるようにみえますね。
産後2~3日もするとむくみが取れて目もパッチリと開いてかわいくなります。
それに、産後1~2日は狭い産道を何時間もかけて生まれてきた影響もあって、脳圧が高くなっているのか赤ちゃん達は嘔吐反射がみられます。
そうした赤ちゃん達の分娩時の影響が落ち着いたころ、オッパイも出るようになって3日目ころから親子共々「やれやれ」という状況になるのです。
ところが病院出産においては分娩後6~8時間後には糖水が与えられ、10~12時間後にはミルクが与えられます。
嘔吐反射が収まらないうちからの投与ですから、赤ちゃんたちには負担だったりするかもしれません。
なかには与えられたミルクを一気飲みして平気な強者ベビーもいますが・・・。
ここからは私の個人的な意見であって、学術的なエビデンスなどというものはありませんから、自由に読み流してくださってけっこうです。
そもそも出産とは自然の摂理であって病気ではありません!
自然のしくみには無駄がありません。それなりの理由があり無理がありません。
人間の人生って「辛抱・我慢」が大切ではありませんか?
人生のはじまりは「忍耐」からです。
赤ちゃん達は、初めから楽をしておっぱいが飲めるわけではありません。
出ないオッパイを頑張って吸って吸ってようやく飲めるようになるのです。
なのに、忍耐をじゅうぶん学ぶ前にミルクが与えられてしまいます。せっかくの学習と努力の機会が早々に奪われてしまいます。
とはいえ赤ちゃん達は水分が不足すると、それだけで熱を出してしまいます。
あまりにも初期授乳ができないと血液が濃くなって黄疸も強くなったりします。
ほんの少しの水分補給でよいのです。
おっぱいの一滴二滴が大切なので「まだ、出ないから」とあきらめないで、せっせとおっぱいを吸わせることが大切です。
さらに気を付けなければならない事は、赤ちゃんが痛いほどおっぱいを吸っているようでも、実際は吸えていないことがあります。
初産で乳頭がまだじゅうぶん伸展しない場合、それに加えて赤ちゃんの舌が短めで上手に吸えない場合は要注意です。
そのような場合は、授乳初期に少しミルクの力を借りなければならないことがあります。
ここであきらめたり、罪悪感や劣等意を持たないことです。
あくまでもミルクは補助的に使い、頑張って母乳を含ませることが大切です。
その頑張りは必ず報われる時がきます。
母として、我が子への最初で最大のプレゼントになるのですから。
心身共に健全で健康な子どもに育つことを願う気持ちがあれば頑張れるはずです。
くじけそうになった時は地域で開業をしている助産師を頼って下さい!
一人で悩まず、相談のできる人を捜して下さい。
おっぱいの不思議
人間の身体ってすごくないですか?
妊娠して出産するまでは、女性を最も女性らしく魅力的に見せる為の身体の一部でしたが、出産するやいなやそれは人間の命をつなぎ育む為の大切な器官となるのです。