母乳外来
母乳外来
◎母乳トラブル
問題Ⅰ・・・おっぱいにしこりが出来て授乳をしたり、触れると痛い。熱もなく、赤くもなっていない。
考えられること・・・おそらく乳管に乳栓が詰まったのでしょう。
そのひとつの乳栓が下の写真です。
この乳栓が抜けるのに2日間かかりました。
とても、大変でした。
母乳トラブルの8~9割がこの乳栓が原因でおこると考えて間違いないでしょう!
乳栓には硬いものや柔かいもの、脂肪の塊のようなものなどいろいろあるようです。大きさもさまざまです。
ある日、おっぱいが張って痛みがあったけど、しっかり授乳をしたら楽になったなどという経験をしたことのある方は多いのではないでしょうか。
血の濁りが原因とも思える乳栓ですが、硬さや大きさにあまり問題が無ければ授乳をすることで母体の射乳力とベビーの吸啜力で自然に抜けることもあります。
あるいは、抜けるには抜けたのだけど乳頭の先に白斑が出来ちゃって痛いということもあります。
この場合の白斑は傷ですので、すぐには治りません。
時には、治癒と白斑を繰り返すことがあります。
やっかいなのは硬くて乳口部より大きい場合です。
これは、排出するのにとても痛く、まるで針で刺されるようだと言います。
短時間でガチガチになってしまうことがあります。
出来ること
①食事の内容をあっさり系にすること。(香辛料は使用をしないこと、肉類、乳製品、白砂糖系のおやつ、ジューシーなフルーツ、揚げ物は禁、生魚は避ける)
②頻回授乳をする。
③クーラーや冷水で身体を冷やさない。
④しこりの部分にジャガイモ湿布をする。(冷えピタや氷で冷やすよりずっと効果的)
⑤2~3日頑張っても改善しない場合は助産師のケアーを受けること。(患部が赤くなったり、熱が出てからでは遅い)
問題Ⅱ・・・乳頭に水泡や白斑が出来て、授乳中に痛む。乳房にしこりがある場合や軽度のしこりを感じる場合がある。
考えられること・・・元々の原因は乳栓。乳栓が乳頭近くまで排出されてくると水疱になります。
それでも頑張って授乳をすると水疱が破れて白斑という傷になります。
白斑の部分から乳汁が出ていればしこりは解消されることが多いけれども、何となくすっきりしない場合があります。
白斑は傷ですからすぐには治癒しません。何度も同じ部分に白斑が出来ることがあります。
出来ること
①痛くてもしっかり授乳をすること。
②白斑部の保湿。
乳首の長さは問題ないが硬度が強いために長く吸われると傷になることがあります。次第に軟らかくなるが数か月を要することがあります。
陥没にての短乳頭の場合、最初は大変苦労をすることが多いものです。乳頭保護器などを用いてかなり努力が求められます。
乳腺膿瘍
乳腺炎を放置し、ケアーを怠るとどうなるでしょう!
人間の身体はすごい!の一言に尽きます。
高熱・発赤・疼痛が数日間続きます。普通はこの時点でケアーをきちんと受けたり病院受診をします。
しかし、ぐずぐずして病院受診や乳房ケアーを受けずに経過してしまうと膿性乳汁は出口を求めて皮膚を突き破って排乳をします。
多くの場合、このようになる前に病院受診をして切開術を受けることになります。
これは乳腺膿瘍ですが乳腺炎の部分に菌が感染した状態です。乳腺炎が全てこのようになるというわけではありません。が、油断は禁物です。
おっぱいトラブルを決して侮ってはなりません!大変痛くて怖い経験をすることになります。
通常、やわらかくて敏感な乳房にメスを入れるなんて 到底考えられないことですが、実際に膿瘍になられた方々はあまりの痛さやつらさに「このおっぱいを切り取って欲しい!」と思うそうです。
このような参事に絶対にならないように、日頃から食べ物や授乳には十分気をつけましょう!
重症乳腺炎の膿瘍形成例
電話連絡を受けて来院された時点で、すでに膿瘍形成状態で手が付けられない状況でした。
しこりとなった部分の最先端の皮膚は今にも破裂しそうに表皮が剥けかかっています。
このような状態では痛過ぎてマッサージなど出来ません。
すでに助産師の手技の範囲を逸脱していると言えます。
こうなると一刻も早く乳腺外科のある専門病院の医師にお願いしなければなりません。
いたずらに処置を引き延ばしていては菌が全身にめぐり敗血症という恐ろしい状態になりかねません。
この場合その足で病院へ行っていただくようお勧めしました。
後日、病院より多量の膿瘍を切開排膿し、膿性乳汁は約150mlあったとのご報告をいただきました。
このようになるには、かなりの時間がかかっているはずです。
この方も他院での治療やケアーを受けておられたようです。
さらにこの方の問題は乳頭が短く吸いづらいということとベビー自身も舌が短く飲み下手であったことが問題を悪化させる原因ではなかったかと考えます。
いずれにしてもトラブルが長引く場合は要注意です。